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あるくの从作家見聞記|No.8 内藤瑶子展「否考式(ひこうしき)」

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ライターの山田歩さんによる「あるくの从作家見聞記」もNo.8となりました。今回は、10月中旬に京橋のギャラリーT-BOXにて開催された内藤瑶子展の見聞記送っていただきました。ちなみに、恐縮ながらこの内藤とはこの人人会サイト設営と更新を行なっている私のこと。このような場を設けてくださる人人会と山田さんに心より感謝を申し上げます。(文責 ないとう)

あるくの从作家見聞記7

◉内藤瑶子新作展 ―もう何も考えたくない―『否考式』
10月16日~21日(2017年) 東京・八重洲 T-BOX

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ピカソの「一枚の傑作を描くよりも、その画家が何者であるかということが重要である」という言葉を思い浮かべながら、内藤瑶子の作品を観ていると、彼女の描く作品よりも彼女は何者だろうかというのが気になってしようがない。これまで彼女の作品をいくつか観てきたが、それぞれ違った表現で描かれていて、どの作品を論じれば良いのか分らない。なんとも不可思議な作家である。今回、T-BOXで開かれた「-もう何も考えたくない-『否考式』」と題された新作展の案内状に「でも、何も考えないのも意外に難しい。志向性と偶然とがぶつかりつつあらわれてくる作品画面に、ただただ首をかしげるばかりです」と書いている。

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内藤瑶子展 ―もう何も考えたくない―『否考式』(東京・八重洲 T-BOX)展示風景・10月16日~21日(2017年)

彼女は通信大学で哲学を学んでいる。20世紀初頭のヨーロッパにおける表現主義運動に興味を持ち、その思想的マニフェストともされる著作『現代文化の葛藤』とその著者ゲオルグ・ジンメルの「生の哲学」をテーマとして卒業論文を執筆。ジンメルの表現主義に対する分析を、文化論に焦点をあて解読している。序論によれば、ジンメルは自己を超越し続け、かつ自己同一性と他者との間を揺れ動く「生」概念を通して導き出される個人主体と人間の相互作用から生み出される文化という静的な形式について弁証法的な構造分析をしているとする。彼女によると、ジンメルの本質は、拡大したり収縮したりするアンヴィヴァレンツ性にある。形而上的な展開になるのに個別の事象と実証が残っていて、むしろ「生」よりも実証的な分析に関心がある(ように見える)という。「我々は自分ひとりでは『自分』でいられない、誰かに認識してもらって初めて何者かになれる。他人に自分を表明することで、初めて存在がかなう」ということだろう。それは我々が、「存在」するために、何かを描き、書いたりして「自分」を表明しようとしているものだろうか。それは「生きる」ということに繋がっていくものなのだろうか。

私は、時々、「生きたい」とか「死にたい」とか思いながら悩む。どちらでもない自分を見出そうと思考停止を試みるが上手くいかない。スペイン語のnada y nadaの「何もなくて何もない」という状態にならないかと頭の中で考える。そうして考えてもしようがないと思う。また別な時には、フランス語の「デペイズマン」(depaysement)というシュルレアリスムの用語を思い出す。「故郷や住み慣れた土地、さらにはその拡張としての日常的で安定した環境を、見慣れない、不安定な場面に変貌させる表象(行為)」を意味している。あのロートレアモン「マルドロールの歌」に出てくる「ミシンと雨傘の手術台の上での偶然の出会い」が、そのコンセプトとしては良い例だろう。「デぺイズマン」の訳語は「異境化」とされているが、いまひとつしっくりこない。無意識という人間精神の未知の領域の探求がシュルレアリスムの基になっているとしたら、「異境化」でも良いと思うが、私は「日常の寓意性」を考える。「日常」「非日常」と区別するのではなく、「日常」そのものが常に不安定なもののように思う。突然の侵入者が忍び寄ってくるかも知れないし、破壊されるものかも知れない。内藤瑶子がいう「志向性と偶然とがぶつかりつつ」に対しての私の見解は、この「日常」というどうしようもない厄介さである。考えようと考えまいと歴然として不安定だ。表現することが自分の存在を証明するものなのか私には分らない。ただそこにゆらゆらと佇んでいるだけのようにしか思えないのだ。

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出品作「kuroneko(blackcat) crisis」版画紙にコラグラフ、モノプリント、手彩色、2017

内藤さんのジンメルに関する論文を読み、「生の哲学」に触れると、改めて「存在すること」「表現すること」の意味を知り「生」について考えさせられる。それで彼女の作品や彼女が何者であるかにも興味を持つ。彼女が高校を中退後、独学で絵を描きはじめたと知り興味を抱いていた。油画・日本画材、各種版画技法で制作される作品を観るにつけ魅了されていく。从会のホームページの作成、更新も行うなど多才だ。それでインターネットで彼女を検索すると、まっ先に現れてくる彼女の画像は洋式便器から飛び出してくる姿にはびっくりする。もちろん彼女の作品画像も観ることができる。それは多種多彩。16歳の時の「風景」という油彩から現在のコラグラフによる作品まで、変幻自在なのだ。一体、何者だと思わざるを得ない。彼女は一枚の傑作を描くつもりはないのではないかと確信する。彼女の作品に魅了された一人に「神戸わたくし美術館」の三浦徹氏がいる。三浦氏は「内藤瑶子の世界」と題されたリーフレットで内藤瑶子を「描いてきたからこそ作家は生き続けてこれたのではないか?作品の中には作家の生命(いのち)が刻み込まれている」としている。内藤瑶子が絵を描く一方でジンメルの「生の哲学」に関心を持ったのをいち早く見抜いているように思う。彼女は1985年生まれだから、現在は30代だ。子育て中の身だが、作品も彼女自身も若々しく自由奔放である。彼女のおかげで私も過去に読んだ哲学の本や小説を思い出した。そして、たとえ黙って佇んでいるだけでもこの世に存在し、何かを表明しようとしているのではないかと思うようになった。のっぺらぼうの顔にうっすらと色彩が現われてきているように感じている。

(山田歩)

なお、この記事にて取り上げてくださった私の表現主義に関する文章と、それに関連した物事などを私のブログにアップさせていただいていますので、興味がある方はぜひ。

次回もお楽しみに!

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田端麻子個展、佐熊桂一郎・古茂田杏子二人展のお知らせ

人人会より、関連作家による10月の後半〜11月前半の展示のご紹介をさせていただきます。田端麻子さんの個展『シーソー』は、現在開催中!〜10月29(日)まで、ご注意ください。羽黒洞では人人会創立メンバー佐熊桂一郎(平成18年没)と現会員である古茂田杏子による展示が開催予定。人人会にとってはこの上ない企画! 恐ろしいほど独特の世界に迫る展示となることでしょう。

特に最近、佐熊桂一郎の画業への取り組み方や生活ぶりへの関心がちらほら聞かれます。画風があまりブレず、毎日決まった時間に淡々と絵を描き続けたことでも知られています。


◉田端麻子個展『シーソー』

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2017年10月21日(土)~10月29日(日)
11:00〜18:00
〒1810001東京都三鷹市井の頭4-3-17 B1  TEL・FAX: 0422-26-7507

 ギャラリーのブログによれば、「武蔵野の森の中、静寂な空間」とあります。田端さんの世界にゆっくり浸れる空間となっていることでしょう。


◉佐熊桂一郎・古茂田杏子二人展『抒情の画家』

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2017年11月13日(月)〜25日(土) ※日曜休廊
11:00〜18:30
羽黒洞木村東介 にて(
〒113-0034 文京区湯島4-6-11湯島ハイタウン2F TEL 03-3815-0431 / FAX 03-3816-3569)

佐熊桂一郎(平成18年没)と古茂田杏子は 「日本にしかない表現力」を持つ画家ではないかと考えています。 言葉にはできない哀愁や掴みどころのない心の動きを追い求め、 職人のようにコツコツと粛々として画面に描き出す。 この二人の作品が年を増すごとに愛おしく思われてなりません。 みなさま、是非ご高覧くださいませ。 木村品子(羽黒洞オーナー)


◉内藤瑶子個展「–もう何も考えたくない–『否考式』」

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2017年10月16日(月)〜21日(土)
11:00〜19:30 ※最終日は16:00まで
ギャラリーT-BOXにて


更新を担当している筆者(内藤瑶子)の個展は、すでに終了しておりますが、更新上の都合により掲載させていただきます。田端さんの展示と同様、お知らせが遅くなってしまい大変残念です。

(記載のない場合、文責ないとう)

 

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久保俊寛、亀井三千代、馬籠伸郎、木村浩之、内藤瑶子、成田朱希、林晃久(マロン)、馬籠伸郎、美濃瓢吾による展示のお知らせ

人人会より、7月の後半〜8月前半にかけて行われる関連作家による展示のご紹介をさせていただきます。広島県広島市で開催される久保俊寛さんの個展、O美術館にて行われる『座2017』では亀井三千代さん、馬籠伸郎さんが参加、汐留のパークホテル東京では人人会の作家が多数参加した客室装飾のシリーズが一挙公開となるイベント『ホテルアートフェス』が開催予定となっております。


◉久保俊寛個展『私の中の面々 呉・広島・交友録・第3章』

2017年7月26日(水)~8月1日(火)
9:30〜17:30
ギャラリー並木:広島市中区袋町9-3並木ヒルズ

久保さんが扮するお馴染み(?)の謎キャラクター「カオッピー」。さらに今回の案内状には「ヒロピー登場 Hiroshima Peace」と記されていました。肖像画シリーズ「顔面浴」に平行するこの不思議な自演の意味するところとは!?


◉亀井三千代、馬籠伸郎ほか『座2017』

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2017年7月22日(土)〜8月2日(水) ※7月27日(木)休館
10:00〜18:30 (入館は18:00まで、最終日15:30まで
O美術館 (JR線・りんかい線 大崎駅から1分、大崎ニューシティ2号館2階)にて

亀井さんと馬籠さんが参加する「座の会」は、人人会と同様に創作活動をする個人が集うことによる様々な効果を期待したグループ(パンフレットなどの資料より)。人人会の面々も大変お世話になっている美術ジャーナリスト・藤田一人さんが事務局を務められています。告知画像(↑上記画像)にも藤田さんによる力強いテキストが掲載されていました。初日にイベント多数。詳しくは座の会のサイトをご覧ください。


◉木村浩之、内藤瑶子、成田朱希、林晃久(マロン)、馬籠伸郎、美濃瓢吾ほか『ホテルアートフェス』

2017年8/5(土)および 8/6(日) 15:00-20:00
パークホテル東京にて

料金:1日券2,000円(税金込、アートカクテル1杯付き)
予約先URL:http://hotelartfes2017.peatix.com/
予約・お問い合わせ:03-6252-1111(代)サロン予約担当

素敵なカクテルや作品と共に、夏の夜を楽しんでみてはいかがでしょうか。
パークホテルのART COLORSには、これまでも沢山の人人会作家が関わっています。(以下敬称略)まず今回のフェスで公開される客室の、木村浩之、内藤瑶子、成田朱希、林晃久(マロン)、馬籠伸郎、美濃瓢吾による制作、さらに過去25Fフロアでの企画展示には猪瀬辰男、亀井三千代、古茂田杏子、西田弘英、今年から参加の箕輪千絵子も参加しています。雰囲気が素敵なサイトで、さまざまな作品がご覧頂けます!(http://www.parkhoteltokyo.com/artcolours/index.html


(文責 ないとう)

 

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